書痙 | 不健康大百科(初版)

書痙

【概略】
書痙とは、あがり症や赤面症や正視恐怖症といった病気の仲間で不安障害の一種です。
ペンや鉛筆を使って物を書くときにだけ、手が震えて反対の手でおさえなければ書けない、もしくは全く書けないといった状況になります。
発生要因によって3つに大別されます。

「筋緊張亢進型書痙」
これは書痙の患者さんの中で最も比率が高いそうです。
手のひらの筋肉に力が入りすぎて書くことができないぐらいに震えます。
ひどい場合は筆記具を持つことができないぐらいに筋肉が緊張してしまいます。
「運動亢進型書痙」
運動の最中に震えるタイプで、いざ字や絵を書いていくと震えだすといったものです。各動作(円を書く、直線を引く)を持続して反復して行なっていると次第に滑らかになっていきます。
「無動型書痙」
重症筋無力症などの患者さんが意識的に力をいれようとして震えます。
臨床例は非常に少ないそうです。


【症状】
なにか書こうとして、もしくは書いているときに手が震えます。
例えば、結婚式や葬儀の受付で自分の名前を書く時に手が震えて思うように書けないというのもそうです。慣れない場ですから、極度に緊張して必要以上に力がはいってしまっているのですね。
・会社などでお客様にお茶を出す時に、手が震えてしまう。(若い女性の方によく見られます。)
・学校などの授業でみんなの前で発表しなければならない時に、声や手が震えてしまう。
・手が震えてしまうために、食事が作れない。(主婦の方によく見られます。)
・人と話している時、声が震え、出にくくなる。
・声や手が震えてしまうために、電話に出るのが怖くなってしまう。
・大勢の人前で話をする時に、手や足が震えてしまう。
・顔がピクピクと動いてしまう。
・宴会などの席上で、お酒をついでもらう時に、手が震えてしまう。

手だけではなく声が震えたりすることもあるようです。
こういったことが重なると「また震えるのではないか?」といった不安も重なって、症状が進行したり多岐にわたったりする場合もあります。


【どうすれば書痙になれるの?】
残念ながら、性格に左右される病気のようなのでなろうと思ってもなれるものではなさそうです。
逆に、軽い書痙ならば経験されたことがある人も多いんじゃないかと思うのですが、本人が問題視していなくて進行してないだけかもしれません。
神経質な人や完ぺき主義の人は比較的になりやすいようです。
自分で字が汚いと真剣に悩んでいる人も、書痙にかかりやすいようです。
不安障害というくくりで考えると、自分に自信が無い事について真剣に悩んだり、何かするときには「失敗したらどうしよう」と自分で不安感を増進させましょう。


【書痙になりたくないのだけれど?】
書痙に関わらず、不安障害の類は苦手意識が過剰に膨らんで通常の生活に支障をきたすようになることを言います。ですので、苦手だなと思っていることを苦手だと思わなくなるのが一番だと思います。
逆に、悪い結果を人に何と言われても「オレ流だから」と心の底から聞く耳をもたないぐらい図太い人は心配ないでしょう。

不安障害になる要因は日常の中にいくらでもあり、その要因を個人がどう受け止めるかだけの問題なので、苦手を苦手と思わないことが予防になるのではないでしょうか。

もしも書痙や他の不安障害になったかもしれないと思えば、とりあえずは心療内科に行ってみましょう。
心療内科等で診てもらってもだめな場合は、脳や神経の病気の疑いもでてくるので心療内科医と相談してください。
手の振るえだからといって、いきなり脳神経外科等に行って、精神的な原因であるにも関わらず手術したりといった事例もあるようです。

心療内科では薬物療法(抗不安剤)とカウンセリングで治療する方向が多いようです。
ですが「薬は副作用があるから恐くて飲みめない!」といった不安障害を持った患者さんには適用できません。。。(-_-)
薬物療法以外にも、森田療法・認知行動療法・催眠療法といった精神療法があります。

・森田療法
症状をありのままに受け入れて、共在しながら自己の目的(職務など)が遂行されればよし、という考え方を体得する方法です。
・認知行動療法
「自分だけが緊張している」という強い思いこみを「他の人も結構緊張している」という認知に変え、そこから行動の変容を促進するものです。
・催眠療法
直接暗示によって症状を取り除く方法で、猜疑心が強く、暗示にかかりにくいタイプには不向きです。

ごらんのように治療法には向き不向きがありますので、ひとつがダメだったからと諦めるのではなく、他の治療法も試して見ましょう。
精神療法は日々の生活の中で無意識のうちに自分で実践しているようなことがあると思います。
苦手だなと思ってても、自分で大丈夫と思い込んで「えいやっ!」と踏み切ったり、同じ環境の中で同じような状況になってる人を見て「あの人もかぁ」と安心感を持ったりするのは、不安を自分で取り除いているのだと思います。

いずれにせよ生活に支障をきたす程ふるえが酷くなったならば専門家に診ていただきましょう。

ちなみに、私は自他共に認める悪筆でして、自分で書いた字が読めない事が多々ありますが、特に問題とも恥ずかしいとも思っていないので書痙にはならないと思います。
どうしても書面でなければダメといった場合にはワープロを使います。ワープロはダメって言われたら「オレ流」をもちだすか、「もうえーわっ!(▼▼凸」と逆切れして書きません。
それでも三十数年なんとかなってます。。。(,゚Д゚)