尿路結石 | 不健康大百科(初版)

尿路結石

【概略】
尿は腎臓の腎実質(じんじっしつ)という部分で作られ、同じ腎臓の中にある腎杯(じんぱい)・腎盂(じんう)という空間に一時的にとどまります。その後、尿管を通って運ばれて膀胱に溜り、やがて体外に排出されます。
この尿の通り道で結石ができることを『尿路結石』といいます。
腎実質で結石ができることは稀で、腎杯・腎盂・尿管・膀胱に結石ができ、診断時の結石の場所によって、それぞれに「腎杯結石」「腎盂結石」「尿管結石」「膀胱結石」と呼ばれます。
大抵の場合は、腎杯もしくは腎盂でできた結石が尿路を下って尿管・膀胱にとどまります。
大きさは肉眼では見えないほどのものから腎盂全体を占めるものまで様々で、極々小さいものならば尿と一緒に排泄されてしまって気が付かないこともあります。
また、複数の結石が複数の場所でできることもあります。
20~40歳代の男性に多いのも特徴で、結石がある一定の大きさになると尿路を防ぐことになり、尿の流れを妨げます。
また、尿路結石ができた人の約半数は10年以内に再発していると言われています。


【症状】
自覚症状は「疝痛発作」と呼ばれる激痛が特徴的ですが、結石の大きさや存在している場所の違いによります。

・わき腹、背中の激痛
・嘔吐、冷や汗、顔面蒼白、血圧低下
・血尿
・結石の場所や大きさによっては鈍痛の場合もある。


七転八倒の痛みがあるときは「腎杯頚部」「腎盂尿管移行部」「尿管」などの狭いところに結石が詰まって尿の流れを阻害しているからです。
痛みは腎臓のある背部から脇腹、下腹郡へと拡がりますが、しばらくして治まります。
また、男性では精巣、女性では外陰部にも痛みを感ずることがあります。
さらに、尿路の粘膜が結石によって傷ついた場合には血尿が出たり、膀胱にある場合には頻尿や残尿感があります。
結石が「腎盂・腎杯」に留まっている時は痛みは無いか、あっても鈍痛程度です。
しかし、ここで結石がサンゴ状結石のように大きくなりすぎて「水腎症」など腎臓が機能しなくなるなどの合併症を引き起こすことがあります。
また、結石、特に感染結石により尿流の通過障害があると腎盂腎炎から「敗血症」という怖い病気を誘発しますから速やかに専門医(泌尿器科医)を受診して下さい

⇒敗血症とは?
敗血症は体の中に細菌が入っていろんな症状を示す病気で、体に抵抗力がないと症状が悪化する怖れがあります。
細菌そのものが血液中に無くても、細菌から出る毒素や、それに影響された体の種々の物質(これらをサイトカインという)が全身に回って肝臓や腎臓、肺など重要な臓器がおかされて重い症状を引き起こし、中には敗血症ショックを起こして死亡する場合もあります。


【どうすれば尿路結石になれるの?】
なぜ石が出来るのかは尿路感染・代謝異常・ホルモン・薬など原因のはっきりしているものもありますが、およそ約8割は原因不明です。
石が作られる過程は、尿中の結石成分(ミネラル)の濃度が何らかの原因で過飽和状態になり、腎臓に結晶核が生じます。その結晶が成長・凝集して結石となると考えられています。
また素材となる成分によって石の形状や治療法などに違いが出てきます。

・シュウ酸カルシウム
尿路結石のなかでも圧倒的に多いのかシュウ酸カルシウムを主成分とするもので、尿中のシュウ酸が増えることが最も悪影響を与えます。
金平糖状あるいは表面がギサギサな形になるので、小さくても尿菅に引つ掛かりやすく排出されにくいのが特徴です。
このタイプの石が尿路結石のおよそ8割を占めています。
・リン酸カルシウム
この成分の結石は尿がアルカリ性になった時に出来やすいです。
純粋なものは殆ど無く、上記のシュウ酸カルシウムと共存していることが多いです。
・リン酸マグネシウムアンモニウム
尿緒感染が原因で、男性に比べて尿道の短い女性に多い結石の成分です。
尿素分解菌が尿素をアンモニアと炭酸ガスに分解しますが、アンモニアにより尿がアルカリ性になってこの成分の結石が形成されます。
いったんこの結石ができると、石が細菌を増やし、細菌は石をますます成長させるという悪循環が起こり、腎盂腎杯の形そのままのサンゴ状結石となりやすい。
・尿酸
尿が酸性になった時に出来やすい結石です。
痛風、高尿酸血症、高尿酸尿症などの人がなりやすいのですが、尿をアルカリ性にすることで改善できます。
・シスチン
尿路結石には遺伝性のものがいくつかあり、その代表的なものがシスチン結石です。
硬くて体外衝撃波などで破砕しにくいのが特徴ですが、これも尿をアルカリ性にすることで溶かすことが可能です。

尿路結石の8割以上がシュウ酸カルシウムが素材となるで、これが狙い目ですね(・∀・)b
尿のシュウ酸値をあげるには単純にシュウ酸を過剰摂取することで可能です。
ホウレン草、タケノコ、ナッツ類、青魚類はシュウ酸を豊富に含んでいるのでドンドンと摂取しましょう。
この時に注意していただきたいのは、茹でるなどの調理は避けてできるだけ生で摂取するように心掛けましょう。
更に尿を濃くしてミネラル分の結晶を出来やすくする必要があるので、水分の摂取はできる限り控えるとともに、朝食・昼食を軽く済ませて夕飯をしっかりと取りましょう。
胃腸の働きは日中よりも夜間の方が活発になるので(「自律神経失調症」 を参照)尿も濃くなり、石ができる可能性が高くなります。
運動をすると体温調節の一環で尿の排泄が促されるので、なるべく運動もなるべくしないように心掛けましょう。


【尿路結石になりたくないんだけど?】
いまだに大部分の例では原因が分からない尿路結石ですが「食生活」「代謝」「ホルモン」が関係していることは確かで、最大の誘因は食生活です。
結石を作る成分が食物の中にあるように、それを抑制する成分も食物の中にあります。
マグネシウム、ク工ン酸などがそれで「結晶化抑制物質」と呼びます。
バランスの良い食生活が重要なのは、抑制物質をとるという意味でもあるのです。

・野菜、海草、青身の魚を適度に摂取しましょう。
マクネシウムが豊富な野菜を食べることで結石の形成を抑制することが出来ます。アルカリ性の野菜は体の酸性化を防ぎ、結石の抑制物質であるク工ン酸を作ります。
またシュウ酸を多く含む紅茶・コーヒーには、カルシウムを含むミルクを入れればシュウ酸とカルシウムが結合して不溶性の結晶になり、吸収されなくなりますし、おひたしにおかかをかけるのも体によい食べ合わせになります。
その他に、青身の魚も結石予防に有効といわれますが、これも食べ過ぎは逆効果です。
イワシやレバー・納豆にはプリン体など尿酸の前駆体も含まれますのでバランスを考えながら食べましょう。
・塩分、砂糖は控えめにしましょう。
砂糖は尿中のカルシウム濃度を上げて結石の形成に一役買いますので取り過ぎに注意しましょう。
とくに、缶入りのソフトドリンクスなどは約10%の砂糖とリン酸も含まれていますから要注意の飲み物です。
塩分も尿中のカルシウムを増加させるので、なるべく控えるように心がけて下さい。
・バランスよく規則正しく
偏った食生活や過食、運動不足になると結石が出来やすくなります。
食事はバランス良く規則正しくを心がけ、肥満にならないように注意しましょう。
・水分を多めに取りましょう。
結石は、尿中の成分が結晶化してできるものです。したがって、体の水分が不足したり疲労などで尿が濃くなると、結石ができやすくなります。また尿意をがまんするのもよくありません。
水分を多めにとり、尿の量を増やすようにしましょう。日頃から「食後にお茶を一杯よけいに飲む」のも良い心がけではないでしょうか。
・運動することで代謝や排泄をスムーズに行う
運動不足は身体の代謝機能そのものを衰えさせるほかに、肥満による尿の酸性化も促進させます。

「尿路結石」が疑われる場合、まず鎮痛剤で痛みを抑えて、エックス線撮影超音波検査で結石の位置や大きさを調べます。
結石が8ミリメートル以下で尿が流れているようであれば水分を多めにとり、利尿薬や尿管を広げる薬などを服用して自然に排出されるのを待ちます。
自然排出を促すために積極的に体を動かすことも大切です。
結石が大きい場合には体外から結石に衝撃波を当てて結石を砕いて尿とともに排出させます。

過去に患っていても気が付かない事がある病気であることと、いちど患った人は再発する可能性の高い病気であることを踏まえて、年に一度は健診にて血液生化学検査や尿検査で尿路結石の有無を確認したほうがよいかもしれません。